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東京地方裁判所 昭和30年(ワ)4127号 判決

事実

原告(当麻)は、現に被告(竹内)が原告に宛て振出した金三十万円の約束手形の所持人であるが、満期日に支払場所に呈示したが拒絶されたので、該手形金とこれに対する年六分の割合による損害金の支払を求めると述べた。

被告は、原告主張の手形は被告が訴外粟屋正春の依頼を受けて融通手形として右訴外人に交付したものであり、原告は右事実を知悉の上右訴外人から本件手形を受取つた悪意の所持人であるから、原告の請求は失当であると抗弁した。

理由

いわゆる融通手形は、その交付を受ける者にそれの利用による金融享受の便を与えるために振出される手形であつて、その振出人は、自己の振出した融通手形が交付を受けた者から他に譲渡された場合には、常に手形振出人としての責任を負わなければならず、交付を受けた者が融通手形の振出交付を受けるに際して、融通手形の振出人に対して、振出人には迷惑を及ぼさないこと、すなわち満期前に該手形を回収するか、満期日に自ら支払に任ずるか等を確約した場合において、第三者がたとい右の事情を知つてその手形を取得しても、この第三者はむしろ融通手形の振出人の、その融通手形の発行を受けた者に対する信用供与に信頼してこの手形による融資に応ずるものというべきであつて、融通手形であることを知つて手形を取得したということは聊かも振出人の責任を軽減させるものではない。

そればかりでなく本件手形は被告が訴外粟屋正春に対して振出した約束手形(融通手形)が原告に譲渡された後、その満期後被告が書替えて新に原告に振出交付したものであることが認められる上に、原告は最初の手形が融通手形であることさえ知らずにそれを取得したものであることが認定されるから、原告の本訴請求は正当であるとしてこれを認容した。

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